凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 柊矢さんが私の耳元で囁いた。吐息がかかり、ぴくんと肩が飛び跳ねる。
 夜景に夢中になっているうちに柊矢さんは、私の背後に回っていた。

「紗衣さん」

 両肩を捕まれ、くるりと体を回転させられる。心臓が早鐘のように鳴った。

 私を射抜く柊矢さんの眼差しは、力強くて切なげで。思わず息を飲むほどの美しさは、夜景と遜色ない。

 見つめ合う時間が少しあってから、唇が触れ合った。角度を変え、前髪をさらりと揺らした柊矢さんに、唇を優しく食まれる。

「んっ……」

 チュッとリップ音を鳴らして一度唇を離し、間近で見つめられた。

 私の頬を手のひらで包み込み、見下ろす目線の色気に頭がクラクラする。

 まさかこんなことになるなんて、叔父からレストラン・イリゼの名刺をもらったときには想像もしなかった。

 ベッドに移動しながら再び唇を重ねる。
 今度は恋愛経験値の低い私にとっては、刺激的な口付けだ。擦り付けて、吸い取って貪るキス。

 足がもつれてベッドまでのほんの数歩の距離が遠く感じた。

 息ができなくて苦しい。許容を越えた息は鼻から熱く抜けた。

「んんっ、ふ……ん」

 柊矢さんの舌は、私の口内を探るようにしっとりと動く。

 こんなに密着していたら、ドキドキと強く鳴る私の心臓の音が、たぶん相手にも伝わっているんじゃないかと思った。

 それでも柊矢さんは私の体を熱くする手を止めない。ベッドに寝かされた私に、丁寧なキスを繰り返した。

 キスだけで下半身がもぞもぞ動いてしまう。こんなもどかしい感覚は初めて。
 どうしちゃったんだろう、私……。体も思考もトロトロにとろけそうだ。
< 17 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop