凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 引っ越したばかりのアパートに帰宅し、シャワーを済ませて着替えると、私は若月総合病院に出勤した。
 更衣室で制服に着替える。シンプルな白のブラウスに茶色いエプロン。ロッカーの扉に付いている鏡に自分を映し、すっかりいつもの日常だなぁと思った。

「おはようございます、橋野(はしの)店長」

 チェリーズコーヒーに入るとすでに橋野店長が出勤していた。

「やあ、おはよう。松本さん」

 橋野店長は私より五つ年上の三十四歳。けれども目が細めで笑顔が若々しいし、男性の中では比較的小柄な体型ということもあり、まだ大学生と言っても通用しそうな外見だ。

「今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ。楽しく働きましょう」

 ぺこりと頭を下げた私に、橋野店長はお得意の柔和な笑顔で穏やかに言った。
 何度か引き継ぎで来たおかげで店内の勝手はわかっているので、ラウンドとカウンターの掃除をテキパキ終えた。

 商品のオープン作業をしていると、年下の女性スタッフ早乙女(さおとめ)さんが出勤したので挨拶し、軽く自己紹介し合う。
 開店の時間を迎えると、早速お客様が来店した。入院患者とお見舞いに来たお客様だ。

 チェリーズコーヒー若月総合病院内店は、ほかの店舗と違う部分がたくさんある。
 他店舗は黒を基調としている内装は、病院内では縁起が悪いとのことで落ち着いた茶系でまとめている。他にも車椅子でも通れるように通路は広く、カウンターは低め設計だ。

 営業時間は午前七時半から午後五時半までで、土日祝日は基本お休み。

 お客様はテイクアウトの方が多く、休憩時間の病院スタッフもちらほら来ているほか、地域の方にもご利用いただいている。
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