凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「突然出て行ったからびっくりしたよ。若月先生になにか用があったの?」

 お茶をすすりながら祖母が呑気に言う。

「ちょっと、ええと……そう、お風呂!」

 なんと言って誤魔化そうか悩んだ私の頭に、戻る途中に廊下で見た『浴室』と書かれたプレートが浮かんだ。

「もうお風呂に入っていいのか先生に聞いてみようと思ったんだけど、見失っちゃった」

 へへっと笑う私を祖母は訝しげな目で見ていたが、それ以上深くは聞いてこなかった。

「若月先生、カッコいいでしょう?」

 ニヤニヤと目を細め、祖母は私の分のバウムクーヘンにも手を出した。

 食欲があるみたい。昨日よりも元気そうだし安心する。

「あ、うん。そうだね。人気の先生だって今日職場で聞いたよ」

 私は話しながら祖母と向かい合ってパイプ椅子に座った。

「あの俳優さんみたいな見た目の上に、院長先生の息子さんだからね! 狙ってる女子が多いって入院病棟でももっぱらの噂よー」

 祖母は興奮気味に言った。早乙女さんと変わらないミーハーっぷり。

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