凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「これじゃあ俺も、あの男と変わらないな」

 柔和に微笑む柊矢さんに見つめられ、エレベーターがどんどん上昇するのに比例して私の鼓動も瞬く間に早まった。

「しかも実際連れ込んでるし、もっと質が悪いな。下心まであるし」

 柊矢さんが弱ったふうに笑って言ったとき、エレベーターは指定階に到達する。エレベーターを降りると、ひとつのドアの前で柊矢さんは足を止めた。
 玄関のドアを開けるとき、ドアノブに手を伸ばして屈んだ柊矢さんとぱちんと目が合った。

「俺以外の男の家には、絶対について行かないように」
「……っへ⁉」

 顔を覗き込んで見つめられ、一気に体温が上昇する。
 ソワソワと視線を彷徨わせる私を、柊矢さんは小さく吹き出して見た。

 下心だなんて。からかわれてる……?

 柊矢さんくらい余裕があれば、もっとマシな反応ができるのに。ただ頬を赤く染めるばかりで気の利いた言葉も言えない自分が恨めしい。

「適当にくつろいで」

 案内された広いリビングには、とても上質そうな家具家電がモノトーンでまとめられて置かれている。シンプルなデザインだけどすごくセンスがいい。

「お洒落なお部屋ですね」
「なにもないだろ? ほとんど寝るために帰って来てるようなものなんだ」
「お忙しいんですね」

 不躾にならない程度に部屋を見渡す。たしかに柊矢さんが言う通り、必要最低限のものしかない。
 テレビにソファ、テーブルの周りには医学誌が積まれている。

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