凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 柔らかい感触を確かめ合ってから、くちゅっと唇を食む音がする。
 舌が口内をねっとりと動き、絡み合う感覚が心地よくて、意識が遠退きそうだった。

「んっ……ふ」

 耐えきれずに口端から息を漏らすと、柊矢さんは一度唇を離し、上気した私の顔を見つめた。

「可愛い」

 柊矢さんは可愛いを安売りし過ぎだと思う……。
 深いキスが気持ちよくて、頭がクラクラするほど陶酔している私を可愛いだなんて。どうかしている。

 恥ずかしくて目を逸したら、柊矢さんはそれが気に食わなかったのか再び私の唇を強引に奪った。 

「んふ! んんっ」

 ガブッと齧り付くキス。

 舌で口内が蕩けそうなくらい解されて、下半身が甘くうずく。
 鼻からすうっと空気が抜けて、頭の奥が快楽に撹拌される。

 柊矢さんの動きに合わせるのが精一杯。

 私がもじもじしていると気づいた柊矢さんは、脇の下に手を入れて軽々と抱き上げ、自身の太ももに跨がせる体勢で私を座らせた。

「あ、あの、柊矢さん……」

 この体勢、なんだか恥ずかしい。

 息が浅くなっていたので私は呼吸を整える。全身が脈打っているみたいにドクドクしていた。

 柊矢さんは紅潮している私の顔を覗き込むと、意地悪そうにクスッと笑う。

「そうやって恥ずかしがってる顔もグッとくる」

 私の反応を見ながら耳の後ろを弄る。うなじの辺りがゾッとして、全身に力が入った。

「紗衣、こっち見て」

 たまらずに首をふるふると左右に動かす。羞恥で頭がどうにかなってしまいそう。

「参ったな。その顔、煽ってるようにしか見えない」

 うなだれた私は、クッと堪えて笑った柊矢さんの胸元にもたれかかった。

 ああ、頭がボーッとする。
 擽ったくてこそばゆくて、気が遠くなる。

 そこで私はようやく、二杯分のカクテルが効いてるんだとわかった。
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