凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「先生、お兄さんもお医者さんなんですってね!」

 両手を合わせた祖母がワクワクした顔で言う。

「おばあちゃん、どこでそれを」
「さっき入院病棟に遊びに行ったら、入院仲間が教えてくれたんだよ」

 私の質問に、祖母は事もなげに答える。

 私は内心冷や冷やした。
 橋野店長から、柊矢さんはお兄さんと仲が悪いと聞いていたから、気に触るのではないかと思ったのだ。

「ええ、そうなんです」

 けれども私の心配をよそに、柊矢さんは気にする様子もなく鷹揚に微笑んで頷いた。

「ご兄弟でお医者さんなんて素晴らしいですね。またお世話になることもあるかと思いますから、そのときはよろしくお願いします」
「いやいや、もう大丈夫ですよ、松本さん」

 和やかに言い、「では」と会釈すると柊矢さんは早乙女さんが待つレジに歩み寄る。

「はぁー、本当にイケメンだねぇ。うっとりしちゃう」

 コーヒーをテイクアウトした柊矢さんが去ってから、祖母はうっとりした表情で呟いた。

「ここにコーヒー買いに来るなんて、ますますお近づきになれそうだね!」
「おばあちゃん、もういいって」

 興奮する祖母をなだめ、私はバウムクーヘンを手土産に持たせた。

 ルンルンと上機嫌な祖母が帰ったあと。

「松本さんて、柊矢先生とお付き合いされてるんですか?」

 客足が途絶えたとき、早乙女さんがストレートに私に聞いた。

「ま、まさか! あ、さっきの祖母の話なら全部勝手な妄想なので」

 お近づきがどうとか言ってた祖母の声が聞こえたのかもしれない。
 私は冷静を装い、軽く笑って否定する。

 すると早乙女さんは、周囲をちらりと覗ってから深刻そうな表情で私に耳打ちした。

「でも、こないだ柊矢先生と松本さんが一緒に車に乗るところを見たって人がいて、密かに病院内で噂になってますよ」
「えっ⁉」

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