凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 身長、体重はともに平均的で、肩まで伸びた細くて栗色の髪の毛や、それから色白なところ。鼻と口は小さめだけど目は大きめで、視力がいいところ。すべて母譲り。

「ありがとう、おばあちゃん」

 母が祖母からもらって大切にしていたもの、私も大事にするからね。

 そう思って、箱を手のひらで包み込むように持ち、胸にあてたときだった。

「本当はね、紗衣が結婚するときに渡してって頼まれたんだよ」
「えっ」

 結婚するとき?
 予定はおろか、恋人すらいない私にはまだもらう権利はないんじゃ……。

 私は口元だけニッと横に広げたまま、瞬きを忘れて硬直した。

「えっと……、今受け取っちゃって良かったの?」
「紗衣もそういうきちんとしたものをひとつは持っておいたほうがいいかと思ってね」

 たしかにシンプルな真珠のネックレスは一本あれば冠婚葬祭に重宝するだろう。この年になれば、フェイクじゃなくて本物がいい。

 素直に祖母の意見に同意した矢先。

「麻美子が結婚したのが、今の紗衣の歳なんだよ」

 祖母は懐かしむような、切なげな表情で続けた。

「元気なうちにひ孫の顔が見られたら幸せなんだけど……」

 ひ、ひ孫?

「え、ええっと……」

 反応に困った私が石化している間に、母の弟である叔父が面会に来た。

 三人で少し話をして、次第に祖母が眠そうな顔になってきたので、私と叔父は「また来るね」と告げて談話室に移動した。

「母さん、元気そうに振る舞ってはいるけど、年も年だから弱気になってるんだよ」

 入院の手続きも手術の付き添いもこなしてくれた叔父は、心配そうに眉を下げて言った。

「検査結果も気にしてるようだし。紗衣の話をするときだけ、顔つきも声も明るくなるんだよ」
「そうなんだ……」

 やっぱり、私の前ではかなり頑張って明るく振る舞ってくれたんだ。勝手に孫自慢されて恥ずかしくて怒っちゃったけど、元気ならそれだけでいい。

 ひ孫の期待は今の私にはちょっと荷が重いけれど……。
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