凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
手作りのカクテルをご馳走になった日、私は柊矢さんとメッセージアプリのIDを交換していた。
祖母の件でお礼の気持ちを伝えたかったんだけど、躊躇してしまう。
『でも、こないだ柊矢先生と松本さんが一緒に車に乗るところを見たって人がいて、密かに病院内で噂になってますよ』
早乙女さんの言葉がずっと頭に残って離れない。
柊矢さんは私と噂になって迷惑じゃないだろうか。誰かに聞かれたりしてないだろうか。
『松本さんて、柊矢先生とお付き合いされてるんですか?』
もしも柊矢さんが誰かに聞かれたら、どう答えるのかな。
あの整った顔で飄々と、ただ笑ってやり過ごすのかな。
……私たちの関係ってなんだろう?
そんな疑問が頭の中を支配する。
メッセージを送れないまま、時間だけが過ぎた。
柊矢さんは相当忙しいのか、コーヒーを買いに来る頻度も減り、顔を見る機会がない。
悶々とした思いでいる私に柊矢さんからメッセージが届いたのは、それから一週間以上経ってからだった。
仕事終わりに柊矢さんの部屋で会おうと誘われたのだけど、病院から一緒に車で向かうとまた誰かに見られて噂になると困るので、私は直接マンションに向かった。
柊矢さんのマンションに来るのは二回目。
手土産に急ごしらえだけどチェリーズコーヒーのコーヒー豆やバウムクーヘンなどを紙袋に詰めて持参した。
「はあ、緊張する……」
高層マンションを前に、立ち尽くした私は柊矢さんの部屋がある最上階を見上げる。