凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「紗衣が謝る必要はない。体調が悪そうだとは気づいてて、支えてあげられなかった俺が悪かったよ」
「そんな……」

 私が首を振ると、柊矢さんは私の肩に手を置いてゆっくりとソファに座らせた。

「紗衣、違ったら悪いけど、もしかして……」

 隣に腰を下ろした柊矢さんが、私の顔を真剣な目で見る。

 無意識にお腹にやっていた手が微かに震えた。私は深呼吸をしてから口を開く。

「まだ、わからないんです。気づいたばかりで」
「うん」
「調べたわけじゃなくて……」

 私は深く俯くと、言葉を詰まらせながら言った。
 
「そうか」

 柊矢さんの反応は短い。絶対に困っている。

 たった一度きりの過ちでこんなことになるなんて思いもしなかったよね。

 沈黙が苦しくて、視界が一気に潤む。一度瞬きをしたら、大粒の涙が太ももに落ちた。

「紗衣」

 呼ぶ声に、両肩がビクッと跳び上がる。

 どうしよう……。なにを言われるのか不安で怖くて、胸がすくんだ。
 耐えきれなくて、両目を強く瞑ったとき。

「大丈夫、心配はいらない」

 体が温かいぬくもりに包まれた。
 柊矢さんが真横から私の体をすっぽりと抱き締めたのだ。

 体に回す腕に少し余裕がありそうなのは、私だけではなくお腹もまるごと包み込んでくれているからに思える。

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