凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「へえ、紗衣の叔父さんが?」
「はい、新聞社で働いてるので地域の情報には詳しくて。美味しいお店があると教えてくれるんです」
「じゃあそのレストラン、行ってみようか。美味しいと言えば、紗衣は今日はなにをご馳走してくれるの?」

 電子レンジで加熱した玉ねぎなどを挽肉に混ぜ、タネを成形していた私は柊矢さんに微笑んだ。

「煮込みハンバーグです」

 今日のメニューはしめじと玉ねぎを炒めたデミグラスソースで煮込んだハンバーグ。デミグラスソースもウスターソースとケチャップ、コンソメで簡単に作れるのにとっても美味しい、自慢の手作りメニューだ。

「紗衣の得意料理なんだ?」
「得意って言うか……。うちは亡くなった母の代わりに祖母が毎日料理を作ってくれたんですけど、どれも和食ばかりで。それも大好きだったんですけど、ときどきこういった洋食のメニューも無性に食べたくなって、それから自分で作るようになったんです」

 フライパンに油を敷いてハンバーグを焼く。
 そのときハッと気づき、私はすぐさま柊矢さんを見上げた。

「あ、自分が好きなものを作ってしまってすみません! 柊矢さんはお好きですか? 苦手とかないですか?」
「全然だよ。俺も小さい頃、よく母親にハンバーグを作って頼んだなぁ」
「そうなんですか。よかったです」

 柊矢さんの小さい頃の話を聞けて、ホッとした私は胸を撫で下ろす。
 ジューッと食欲をそそる音がキッチンに響いた。

「ガキの頃は兄貴とどっちがたくさん食べるとか、早く食べ終わるかでいちいち競ってたな」

 懐かしそうに言った柊矢さんの隣で、私は耳を疑った。

「お兄さんって、亮真先生ですよね?」
「ああ。今アメリカの病院にいるけど、じきに戻って来るんだ。そしたら紗衣に紹介するよ」
「え! しょ、紹介⁉」

 素っ頓狂な声を上げた私を、柊矢さんはきょとんとした顔で見る。

 だって、ご家族に紹介してもらうのはかなり緊張するし、それに……。

「あ、ひょっとして紗衣、俺ら兄弟が不仲だとかいう噂を信じてる?」

 意地悪そうに目を細めた柊矢さんの前で取り繕う術もなく、私は正直に頷いた。
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