凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「橋野店長……?」

 すると、低く険のある声で呟いた柊矢さんが表情を強張らせた。

「あ、話したのは仕事のときです! プライベートでは全く関わりはありません、よ?」

 急に雰囲気が不穏になったので、私は焦って言い訳みたいになった。

 しかも焦り過ぎたせいで語尾が変なイントネーションになってしまい、真面目な顔つきだった柊矢さんが吹き出した。

「わかってるよ」

 笑みをこぼしながら言い、柊矢さんはコーヒーカップをテーブルに置いた。

「参ったな。俺、今まではこんなに狭量な性格じゃなかったと思うんだけど」

 そして私の手からもカップを奪うと静かにテーブルに置き、体を向き合わせた。

「紗衣が他の男の話をするのがこんなに面白くないなんて」

 自嘲気味に笑い、呆然とする私の顔を真っ直ぐに見つめる。 

「妬いてる。カッコ悪いだろ」

 一拍間を置いて、私は急いで手を左右に振った。

「いえ! そんな……」

 むしろ真剣な眼差しが脇見なんて到底できないくらいすごくカッコいいし、それに、妬いてくれたのが際限なく嬉しいと思ってしまう私は不謹慎だろうか。

 見つめ合うのが恥ずかしくて一瞬目をそらし、もじもじと下方に目線を彷徨わせる。

「しゅ、柊矢さん」

 か弱い声で囁くと、相手は「ん?」と優しく小首を傾げた。

「私も、好きです」

 緊張で心臓がバクバクした。ちらりと黒目だけで柊矢さんを窺う。

「まだ、言ってなかったから……っきゃ!」

 言うや否や、柊矢さんにきつく抱き締められた。
 衝撃で視界がガクンと前後に揺れ、私は目を開けたまま放心状態。
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