凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「残念ながらないよ。だからありがたくここに食事に行かせてもら……」
言いかけて、私は嫌な予感がした。
以前叔父からお見合いの話を持ちかけられた。知り合いの息子さんだとかで、私抜きで話がどんどん進んでしまい、断るのに骨が折れたんだ。
紗衣も適齢期なんだから、少しくらい会ってみたらどうだい、なんて言ってなかなか諦めてくれなくて。独身を謳歌している叔父に適齢期なんて言われても複雑な心境だし、それにあんな面倒な思いは二度とごめんだ。
「あ! だからってまた変な気を回さないでね!?」
つい声を荒らげた私を、叔父はどうにか落ち着かせるよう優しく言う。
「はいはい、わかったよ。でも、その気になったらいつでも婚活手伝うからな」
「大丈夫だってば」
そんな言い合いをしながら若月総合病院を出て叔父と別れ、私は病院前のバス停からバスに乗った。
カフェチェーンに就職して五年間、県外の店舗で働いていたので水色の路線バスに乗るのも久しぶり。乗客に卒業した女子校の制服姿を見ると、キラキラした青春時代の思い出と同時に母との悲しい別れも蘇り、切なくて温かい気持ちになった。
叔父が予約してくれたレストラン・イリゼは、若月総合病院からバスで十分ほどの路面店が立ち並ぶアーケード街を一本奥に入った細道に、ひっそりとあった。
真っ白でシンプルな建物を前に腕時計を確認すると、17時を回ったところ。
少し逡巡し、名刺を握り締めてドアを開ける。
「すみません」
店内にはまだお客さんは誰もいない。
早かったかな?開店時間を調べてから来店するべきだったかしら。
後悔しながら店の奥に足を進めると、「はーい」厨房から若い男性が出てきた。
「あの、私、松本と申しますけれども……」
おずおずと頭を下げると、コックコート姿の男性は合点がいったのか「あ!」っと短い声を上げた。
言いかけて、私は嫌な予感がした。
以前叔父からお見合いの話を持ちかけられた。知り合いの息子さんだとかで、私抜きで話がどんどん進んでしまい、断るのに骨が折れたんだ。
紗衣も適齢期なんだから、少しくらい会ってみたらどうだい、なんて言ってなかなか諦めてくれなくて。独身を謳歌している叔父に適齢期なんて言われても複雑な心境だし、それにあんな面倒な思いは二度とごめんだ。
「あ! だからってまた変な気を回さないでね!?」
つい声を荒らげた私を、叔父はどうにか落ち着かせるよう優しく言う。
「はいはい、わかったよ。でも、その気になったらいつでも婚活手伝うからな」
「大丈夫だってば」
そんな言い合いをしながら若月総合病院を出て叔父と別れ、私は病院前のバス停からバスに乗った。
カフェチェーンに就職して五年間、県外の店舗で働いていたので水色の路線バスに乗るのも久しぶり。乗客に卒業した女子校の制服姿を見ると、キラキラした青春時代の思い出と同時に母との悲しい別れも蘇り、切なくて温かい気持ちになった。
叔父が予約してくれたレストラン・イリゼは、若月総合病院からバスで十分ほどの路面店が立ち並ぶアーケード街を一本奥に入った細道に、ひっそりとあった。
真っ白でシンプルな建物を前に腕時計を確認すると、17時を回ったところ。
少し逡巡し、名刺を握り締めてドアを開ける。
「すみません」
店内にはまだお客さんは誰もいない。
早かったかな?開店時間を調べてから来店するべきだったかしら。
後悔しながら店の奥に足を進めると、「はーい」厨房から若い男性が出てきた。
「あの、私、松本と申しますけれども……」
おずおずと頭を下げると、コックコート姿の男性は合点がいったのか「あ!」っと短い声を上げた。