凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「その節は本当に、いろいろとありがとうございました」

 ぺこりと頭を下げた私に、早乙女さんは大げさなくらい大きく手を左右にブンブン振る。

「いいんですよー! それより今度ゆっくり柊矢先生との恋バナ聞かせてくださいね!」
「こ、恋バナですか⁉」
「はい、柊矢先生のいちファンとしては、どんなきっかけでお付き合いが始まったのかかなり気になりますから!」
「は、はあ……」

 困惑して小首を傾げる私に構わずに、早乙女さんはウキウキした様子で仕事に戻った。

 デートにおすすめの穴場スポットかぁ。
 次のデートのコースは海を見てのドライブと映画鑑賞に決まったけれど、こうしてデートの行き先を考えるだけでも楽しい。

 でも柊矢さんは基本インドアなタイプだし、なによりとても多忙だから、あまり遠出しないプランのほうがいいのかな。

 恋人とこうしてデートを重ねる経験は生まれて初めてだから胸が踊る。 
 柊矢さんは今までの彼女とはどんなデートをしていたんだろう……?

「すみません」

 レジの前にお客様が来て、私はしゃきっと背筋を伸ばし笑顔を浮かべる。

「はい、いらっしゃいませ」

 女性の私も一瞬面食らうほど美しい女性が、ふんわりと品良く微笑んだ。

「ここのコーヒー、飲んだことなかったんだけどこないだいただいてすごく美味しくて」

 はっきりとした目鼻立ちに、とてもきれいに巻かれた栗色の長い髪。色白で肌は透き通るように美しく、ボディラインが目立つニットを着ていてスタイルも抜群だ。

 こんなにきれいな人、生まれて初めて見た。
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