凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 たしかに早乙女さんが言った通りだ。

 いきなり知らない女性と仲睦まじく現れるから動揺したけれど、昔から家族みたいに仲が良い女性のひとりやふたり、いたっておかしくないわけだし、元カノだってそりゃあ何人もいるよね。

 あの類まれな整った容姿、医師としてのスペックも高く、意地悪だけど優しいし……。

 容姿といえば、あのふたりは本当にお似合いだったな。
 原田さんも背が高いから高身長の柊矢さんと釣り合っていたし、ズボラなんて言われて笑われてる柊矢さんは新鮮で、新しい一面を見た気がした。

「そいえば今度、若月総合病院開院五十周年の記念パーティーがあるんだけど、俺たちカフェスタッフもぜひ参加しないかって事務局から話があったよ」

 橋野店長が気分を変えるように明るい調子で言うと、早乙女さんが身を乗り出した。

「え! パーティーに私たちも参加していいんですか⁉」
「うん、先生方や医療スタッフたち、事務のみなさんや地域の方も出席して盛大に行われるらしいよ」
「へえ、そうなんですか! 美味しい料理とか食べられるんですかね」

 ワクワクした表情で両手を合わせる早乙女さんが、私のほうに体を向けた。

「楽しみだなぁ! 松本さん、柊矢先生からなにか聞いてます?」
「亮真先生もそれに合わせて帰国するって話だけど」

 こちらを見た橋野店長に対し、私は顔を曇らせた。

「いえ、なにも聞いてないです……」

 そんな盛大なイベントがあるなんて、まったく知らなかった。
 柊矢さんが今度私に亮真先生に紹介してくれるって言ってたけど、忙しくて忘れてしまったかもしれない。

「そうですかー。なに着ていこうかなぁ」

 気が早い早乙女さんが嬉しそうに悩んでる隣で、私は少し暗い気持ちを抱いて俯いた。
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