凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
 母がいたら、いろいろ相談できたのかな。祖母の病気のことや、仕事の悩み、柊矢さんとの恋のこと。聞いてもらいたかったな……。

 帰りにスーパーで夕飯の買い物をして祖母の家に帰宅し、祖母と晩ごはんを一緒に食べた。
 自分で作る洋食もまあ、あれはあれで美味しいけれど、祖母の和食には敵わない。

 ちょうど帰宅した叔父が車で送ってくれると言うので、お願いしてアパートに帰宅した。

「ふう、お腹いっぱいだ」

 ソファにドカッと座り、天井を見上げる。
 祖母の料理がどれも美味しいからつい食べ過ぎてしまった。

 今夜のメニューである新じゃがを使った肉じゃがのレシピを聞いたから、今度作ってみようかな。美味しく出来たら柊矢さんにも食べてほしい。

 セミナーはもう終わったのだろうか。
 顔を思い浮かべていたとき、スマホからメッセージの受信音が短く鳴った。

 私はパッと半身を起こし、床に置いたバッグの中からスマホを取り出す。
 メッセージを確認して、私は帰宅してすぐに部屋着に着替えなくて良かった、と心底思った。

“今アパートの前にいる。少しでいいから会いたい”

 なにもない床に躓きながら玄関に向かい、パンプスに爪先を滑り込ませると急いでドアを開ける。アパートの前の駐車場に、柊矢さんの黒い外車が停まっていた。

「突然でごめん。顔が見たくて」

 慌てて助手席に乗り込む。
 フッと目を細めて柔らかく微笑んだ柊矢さんの表情に、胸がキュッとなる。
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