凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
一週間ほど経ち、市内のホテルのバンケットホールで若月総合病院の開院五十周年パーティーが執り行われた。
パーティーの参加者は若月総合病院の職員や医療スタッフのほかに複数の系列病院、介護施設、保育施設の関係者など、優に三百人を超えるらしい。
事務局からのお誘いを受ける形で、私たちカフェスタッフも出席した。
こういった式典に出席するのは初めてだったのでなにを着るか散々迷い、無難に黒のワンピースに決めた。
七分袖と膝丈スカートがフレアなシルエットが綺麗なワンピースは、花柄モチーフのレース使いが上品で派手過ぎない。それに、入院中に祖母から受け取った、母から受け継いだパールのネックレスを着けた。
『麻美子も今の素敵なお嬢さんに成長した紗衣を見たらきっと喜ぶよ』
祖母はああ言ってくれたけど……。
美咲さんに嫉妬してモヤモヤしてる小さい自分を見たら、母はがっかりするんじゃないかな。
自分に自信が持てなくて、私は鬱々とした気分でウエイターからシャンパンを受け取った。
「松本さん、そのワンピース素敵ですね!」
パーティーは始まったばかりなのにすでにシャンパンをおかわりしていた早乙女さんが声を弾ませる。
「橋野店長もそう思いますよね⁉」
「ぶっ!」
突然話題を振られ、ワイングラスを煽っていた橋野店長が吹き出した。
「ま、まあ……」
「今日の松本さんがあまりにもお綺麗なので、橋野店長照れてますね! きっと柊矢先生もびっくりしますよー」
あっけらかんと言う早乙女さんに臆しながら、私は困って首を捻る。
「そ、そうですかね」
「あ、噂をすれば!」
早乙女さんの視線を辿ると、バンケットホールの入り口に柊矢さんの姿が見えた。
細身の黒いスーツに白いシャツ、ストライプのネクタイ。飾り気のないモノトーンのコーディネートが、色白でスタイルの良い柊矢さんにとてもよく似合っていて、すごくカッコいい。