凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「どこに行ってたんですか? 松本さん」
早乙女さんに顔を覗き込まれてハッとする。惰性で足を動かし、どうやら私はバンケットホールに戻って来ていた。周囲の喧騒がエコーがかって膨張して聞こえる。
呆然と見つめ返す私を不思議に思ったのか、早乙女さんは小首を傾げた。
「松本さん、大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です」
「でしたらパーティーが終わったら一緒に二次会しませんか? 近くにお洒落なバーがあるんですよー」
早乙女さんの弾ける笑顔が眩しくて、私は目を伏せた。
「ご、ごめんなさい。私は、帰ります……」
なんとか取り乱さないよう必死で平静を保ちながら、虚ろな声で答えた。