凄腕ドクターの子を妊娠したら、溢れるほどの愛で甘やかされています
「だからもう、これ以上、私に関わらないでください」
涙声で伝える。
しばらく無言が続いて、これでもうさよならなんだと思うと胸が切り裂かれたかのように痛かった。
「えっと、ちょっと待って」
抑揚のない声で言い、柊矢さんは当惑した面持ちで続ける。
「その話、どこで?」
「え? えっと、開院記念パーティーの日、控室の前で柊矢さんと亮真先生の会話を聞いてしまったんです。すみません、聞くつもりは全くなかったんですけど……」
うなだれる私の隣で、柊矢さんは考えるように顎に手をやった。
「たしかに、兄にそんな話をされたな。美咲とはお前が結婚しろとかって」
「はい、柊矢さんは“たしかにそのほうがいい”っておっしゃいましたよね」
目尻に浮かぶ涙を拭いながら言うと、柊矢さんは眉根を寄せ、困ったような嬉しいような、なんとも形容しがたい表情で笑った。
「紗衣は誤解しているよ」
お互いに見つめ合う時間がややあってから、私はぽつりと呟いた。
「ご、誤解?」
「ああ。俺は兄に、親が決めた美咲との結婚を止めて、本当に好きな女性と一緒になるほうがいいなって言ったんだよ」
「え……?」
ほとんど息に近い声が出た。
きょとんと瞳を大きく見開いて、柊矢さんの言葉を一字一句頭の中で丁寧に理解する。
「それに兄が言った、美咲とはお前が結婚しろってのは冗談だよ。許嫁の件は仲が良かった親同士の口約束で、絶対ではないし」
「そうなんですか……?」
夢か現実か定かではない、不思議な気分だった。
涙声で伝える。
しばらく無言が続いて、これでもうさよならなんだと思うと胸が切り裂かれたかのように痛かった。
「えっと、ちょっと待って」
抑揚のない声で言い、柊矢さんは当惑した面持ちで続ける。
「その話、どこで?」
「え? えっと、開院記念パーティーの日、控室の前で柊矢さんと亮真先生の会話を聞いてしまったんです。すみません、聞くつもりは全くなかったんですけど……」
うなだれる私の隣で、柊矢さんは考えるように顎に手をやった。
「たしかに、兄にそんな話をされたな。美咲とはお前が結婚しろとかって」
「はい、柊矢さんは“たしかにそのほうがいい”っておっしゃいましたよね」
目尻に浮かぶ涙を拭いながら言うと、柊矢さんは眉根を寄せ、困ったような嬉しいような、なんとも形容しがたい表情で笑った。
「紗衣は誤解しているよ」
お互いに見つめ合う時間がややあってから、私はぽつりと呟いた。
「ご、誤解?」
「ああ。俺は兄に、親が決めた美咲との結婚を止めて、本当に好きな女性と一緒になるほうがいいなって言ったんだよ」
「え……?」
ほとんど息に近い声が出た。
きょとんと瞳を大きく見開いて、柊矢さんの言葉を一字一句頭の中で丁寧に理解する。
「それに兄が言った、美咲とはお前が結婚しろってのは冗談だよ。許嫁の件は仲が良かった親同士の口約束で、絶対ではないし」
「そうなんですか……?」
夢か現実か定かではない、不思議な気分だった。