エリート警察官は彼女を逃がさない
ーー 本橋美緒、二六歳。
このホテルに勤務していて、いつもはフロント業務を主にしているが、今日はかなり重要な外交パーティーが入っており、そこで何か想定外が起きた時の対応要員として、ヘルプに行く途中だった。
だからホテルの制服でもなければ、ただのパンツスーツだ。いつもはアップのダークブラウンの髪は外交パーティーということもあり、少しでも華やかにと思っていただけだった。
少し遅れたのは通常業務が押したためだし、ホテルの人間なのでセキュリティーもきちんと通っている。
それなのに。
「うっ」
疑われたことで怒りから、私は無意識にその腕を締め上げてしまい、佐渡と呼ばれた男性が声を上げてハッとする。
「ごめんなさい」
いくら濡れ衣だとは言えこんな暴力のようなことはするべきではないと、私は慌てて手を離した。