エリート警察官は彼女を逃がさない


「山の多いS県出身の26歳です。東京には大学の時にきました」
自己紹介のようになってしまったが、そう伝えると二階堂さんは小さく頷いて「続けて」と口にする。

「自己紹介をですか?」
「うん」
なにやら面接のようになってしまったなと思いながらも、別に隠すこともないと私も続ける。

「家族構成は両親と弟で、前は話したように実家は柔道の道場です。母は家庭菜園が趣味で」

「ああ、それで野菜か」
先ほどの電話のことだとわかり、私は恥ずかしくなってしまう。

「ごめんなさい、二階堂さんから電話がかかってくるなんて思っていなくて」

「征爾って呼んで」

「え?」
名前のことだとわかり、私は聞き返す。

「名前。二階堂って堅苦しいだろ?」
そんなことをいきなり言われても、急に呼ぶことなどできない。
「あの、その、おいおい……」
そう答えた私に、征爾さんは「先があるならいいか」と小さく息ついた。

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