エリート警察官は彼女を逃がさない

スマートなエスコートで車に乗ると、征爾さんも運転席へと乗り込む。
そして数十分走ると、車は海沿いから少し細い道を上がっていく。
次に車が止まった場所は、木々に囲まれた建物のエントランスだった。
ホテルにも見えるし、豪華な一戸建てのようにも見るその場所に私は驚いてしまう。

「お帰りなさいませ。準備は整っております」
きちんとしたスーツ姿の男性が、完璧な所作と笑みを浮かべていた。
さっきまで海を前にしてホットドッグを食べていたのに、急な展開に私は内心パニックだ。

「夕食にしよう」
「あっ。はい」
廊下を進んで男性に案内されたのは、モダンな広いリビング、その向こうには広い庭があり、なんと滝まである。そしてその向こうには海岸が見えていた。

「きれい……」
空はちょうど赤紫に色を変えていて、夕日が海へと沈む場面だった。

「テラスにご準備いたしました」
案内され外に出れば、美しい料理の数々が並んでいた。

「ありがとうございます。あとは私がやります」
彼のその言葉に、男性はゆっくりと腰を折るとリビングを出て行った。

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