エリート警察官は彼女を逃がさない

そんな私たちの様子を見ていた二階堂と呼ばれたその人は、静かに言葉を発した。

「佐渡、もう行け。そしてもう一度武術をやり直すんだな」

「はい」
真っ青な顔で佐渡さんは答えると、頭を下げてその場から戻って行った。

「そして」
そこで言葉を区切り、二階堂さんは私をまっすぐに見た。

「部下が大変失礼いたしました。ですが部下が疑った理由もあると思うので、一応身分証の提示をお願いしても？」
先ほどとは違い、微笑を浮かべながら尋ねるその人に、私はため息交じりにポケットからセキュリティーカードを出す。

冷静に問われればそれを拒否する理由もない。
それを見た後、二階堂さんは私にそれを確認すると静かに頭を下げた。