エリート警察官は彼女を逃がさない
「あのパーティーで知り合ったの。覚えていない? 警備責任者していた人」
「あの、いかにもエリートって感じの人?」
「そう」
頷いた私に咲良は怒ったように口を開く。
「よく知らなくなんてないじゃない。国家公務員がこんなことしていいわけないじゃない。今すぐ電話して責任取らせなさい!」
確かに普通に考えればそうかもしれない。相手がいなければ妊娠しないのだし、知らせるべきな気がする。
スマホをバッグから取り出すと、一度もかけたことのない征爾さんの番号を表示する。
「かけられないなら私が伝えようか?」
咲良のその言葉にフルフルと頭を振った。これは私の問題であり私が伝えることだろう。
通話ボタンを押すと、何コールかするも征爾さんは出ることはなかった。
「でない」
「折り返しかかってきたら必ず伝えるのよ」
ぼんやりと呟いた私に咲良は言い聞かすように言葉にした。