エリート警察官は彼女を逃がさない
小声で何かを二人で話しているため、内容まではわからない。
最後にトントンと宿泊者カードを指でたたいた。そこで私はハッとする。
その手の形に見覚えがあった気がした。何度も私に触れたその手をジッと見つめていた日を。
ーーまさか。征爾さん?
その疑問は次の瞬間核心に変わる。
「ありがとう」
それだけだったがはっきりと日本語で言われたその声は、紛れもなく彼の声だった。
忘れないようにそう思ってすべてを刻みつけたのがいけなかった。職業柄人を覚えるのが得意なことを今日ほど後悔したことはない。
女生と一緒にホテルに宿泊するなんて。そういう関係年が思えない。それに私とは違う綺麗な人。