エリート警察官は彼女を逃がさない
「大変失礼をいたしました。どうぞ勤務についてください」
なんとも言えない微妙な空気が漂うのが分かり、私は小さく息を吐いた。
「それでは失礼いたします」
「さっきの腕挫手固見事だった」
クスっと笑われた気がして、私が勢いよく彼の顔を見れば、その瞳は面白いものを見るような表情に見えた。
「本橋さん!」
そこへ何か問題だと思ったのが、ホテルのマネージャーが走ってくる。
「これは、二階堂警視正! うちの本橋が何か?」」
警護の打ち合わせなので会っていたのだろう、その姿に慌てたようにマネージャーが襟を正す。
「いえ、何の問題もありません」
さっきの表情とは全く違う、一番初めに見た表情に戻っていた彼は、それだけを言うと颯爽と歩いて行ってしまった。