エリート警察官は彼女を逃がさない

「何があったんだ?」
まさか不審者と疑われたと言っても、意味がない気がして私は違う質問を返す。
「彼は? 警察の方ですよね?」
「ああ、ここだけの話だが、今回の警備の責任者で父上が警視総監。本人もT大卒の超エリートだよ。二階堂征爾警視正、確か三十歳を過ぎたぐらいじゃないか? あの年で異例中の異例の出世だが、何よりその采配、警護実績など上げたらキリがないほどの人物だよ」

まさかそんなすごい人だったとは思わず、私は今更ながら背中に冷汗が流れる。
「それより、今日の大使の離任レセプションは招待客よりどうもかなり人数が多く、料理の減り方も大きいし、売名をしたいモデルとかももぐりこんでるらしいから気を付けてみてくれるか?」

マネージャーの言葉に、まさかその人たちに自分が間違われたなど口が裂けても言えない。

「わかりました」
それだけを言うと、私は気合を入れてパーティー会場へと向かった。
< 6 / 74 >

この作品をシェア

pagetop