エリート警察官は彼女を逃がさない
その説明に驚いてしまう。咲良は征爾さんが尋ねてきたら自分を呼ぶように頼んでいたということだ。

こうして会う機会をくれた咲良に感謝の気持ちでいっぱいになる。

「公安のお仕事好きだったんじゃないんですか?」
「今となればどうだろう」
静かに問いかけた私に、征爾さんは少し考えるような表情をした。

「父や、自分の生い立ちに反抗していた子供だったんだ。もちろんやりがいもあったよ」
そこで征爾さんは自嘲気味に笑ったあと言葉を止めた。

「でも、その仕事で美緒を不安にさせるぐらいなら必要ない」
「征爾さん……」
本気の思いに私はなぜか嬉しいのに泣きたくなってしまう。

「もともと父には警察庁へ戻るようにずっと言われていたんだ。父は美緒に感謝をしているよ」
それならば問題はないのかと私もホッと安堵する。
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