あの夜を閉じ込めて



どん底に落ちた自分を救うためのひとり旅。

あの人を忘れて、前に進むためのひとり旅。

これからひとりで歩いていくための旅だった。

そんな旅で冬夜さんに出逢えたことが奇跡だ。


「望美さんは、はしたなくなんてないよ」

彼の優しい指が、私の唇をなぞる。


「あなたは綺麗ですよ。それで、ずっと可愛い人だなって思ってた」

そのままゆっくりと唇が重なり合った。

 
どくん、どくんと、脈が速くなっていく。冬夜さんの背中に腕を回すと、強いキスと同時に身体を押された。

彼は濡れたシャツを脱ぐ。私も流れるようにコートとアウターを脱がされた。キスをするたびに薄着になっていって、ベッドにたどり着く頃には私は生まれたままの姿になっていた。

「寒い?」

その質問に、私は全力で首を横に振る。寒さなんて感じる余裕はない。自分から誘ったくせに、今さら恥ずかしくて死にそうだ。

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