あの夜を閉じ込めて


「なんで顔を隠すの?」

「だ、だって……」

「ダメ、見せて」

世界で唯一のものを作り出す職人気質の手が、私の両腕を押し広げてきた。

唇だけじゃなくて、首筋や頬にも優しいキスが降ってくる。冬夜さんに触られたところが全部熱くて、火傷するかと思った。

窓際に置かれたステンドグラスのランプが宝石みたいに輝いている。

外は氷点下。部屋の向こうには、坩堝の海が見える。

-3℃と1300℃。寒さと熱さが混沌とした部屋で、私は彼にしがみついた。

ゆっくりと重なって、重みを分け合った。息苦しくなれば、呼吸も与え合った。

――マリンスノー。別名、海雪。
海中の懸濁物(けんだくぶつ)が雪のように白く見えること。

まるで海の底にいるように溺れ合う私たちのことを、マリンスノーみたいだと彼は例えた。

なんてロマンチックなんだろうと、冬夜さんの感性にますます惹かれた。

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