あの夜を閉じ込めて
私たちは銀世界の片隅で時間が許す限り、色々な話をした。
冬夜さんは釧路生まれ。札幌の高校を出たあと、武蔵野美術大学に入り、デザイン学科のガラス専攻を卒業したらしい。
それから暫くは東京で技術を磨き、二年前に北海道に戻ってきて、ここに工房を開いたことを教えてくれた。
なぜ故郷の釧路を選ばなかったのかを聞いたら、ガラス職人になることをひどくご両親に反対されて、今でも帰りづらいのだと言う。
親に会いづらいのは私も同じですと伝えると、彼は目を細めて抱きしめてくれた。
「次は望美さんのことを教えて」
「私の話なんて、つまらないですよ」
「俺の話だって、つまらなかったでしょ」
「私は東京生まれで――」
ずっと永遠に、この時間が続けばいいと思った。
だけど、降り続いていた雪が止む頃には、空の色が変わっていた。
隣には、穏やかな寝息を立てている冬夜さんがいる。
「ありがとう。お元気で」
横たえて微睡む彼のおでこにキスを落とした。