あの夜を閉じ込めて
好きな人と結婚できる確率は4割しかないと聞いたことがある。
愛する人と一緒になれたら幸せだけど、もしもそうじゃないのなら私は一生独身でもいいかもしれない……なんて、最近は考えるようになった。
このままスーパーに寄って帰ろうかな。晩ごはんはなににしよう。
新しい仕事、新しい家、新しい自分。毎日目が回るほど忙しい日々の中、どんな時でも頭に浮かぶのは冬夜さんのことばかり。
私はあの日、彼が寝てる間に工房を後にした。顔を見たら、別れがたくなってしまうと思ったからだ。その選択は間違いだったとは思わない。
函館の雪は溶けたんだろうか。
あの場所で今もガラスを作っていますか?
空を見上げながら想いを馳せていると、とある看板が目に入った。
【ガラスの装飾展】と書かれた個展は十日間だけ開催されている模様で、今日が最終日。
そのガラス工芸作家の名前は――末広冬夜。