冬の夜、君と2人で。
「いや~、弥生が居ないと、ここ女の子ばっかで男1人で入るの怖かったから助かる~!!」

冬夜くんに、『ケーキだってご飯だよ!』とおしきられ、女の子しか居ない店内に男女で入り込む。

ま、周りからの視線が痛いよ……!

「ねぇ、あれって、T大の樋渡冬夜じゃない……?」

「ほんとだ! 噂通りめちゃくちゃイケメン!」

うわぁぁぁ。こんなところにも冬夜くんファンは大量にいるのか……!

まぁ、予想は出来たよ。

道を歩いてる途中でも視線が凄かったし……!

そんなことなんて気にもしない冬夜くんは、2人分のバイキング代金をさらっと払っていて、

「えっ、私今日お金あるし別に奢らなくても……」

と必死に止めたが、冬夜くんは「きょとん」という効果音の出そうな仕草で首をかしげて、

「今日は俺に付き合わせてるだけだからいいよ全然! それに、俺成人してるし」

確かに冬夜くんはもう大人だけど、私たちの年の差なんてたかが4歳だし!

そう言おうとしたら、冬夜くんはいたずらっ子の顔になって、私の耳にこう囁いた。

「それに、弥生には良いとこ見せたいし」

周りには聴こえないほどの、小さな声。

ちょうど席を立ってケーキをとりに行っていたから真横に立たれると、不意にドキドキしてしまう。

私『には』??

「そんなこと言って。ほんとは、ここに来るのも、誰でも良かったんじゃないの?」

さっきからの冬夜くんの言葉に、つい、勘違いをしそうになる。

そういう思いを自分で断ち切るためにも、そう言ったんだ。

けど、冬夜くんは、私の予想してない答えをした。

「いや~、弥生以外だとさ……。なんか変じゃない? 俺みたいな男が甘いの好きとか……」

そんなこと、ないのに……!

むしろ冬夜くんは、可愛い系のイケメンだし、冬夜くんのことをかっこいいと思ってる人でも、きっとギャップでキュンキュンすると思うなぁ。

けど、それが不安だから私と行きたいって思ってくれたのは嬉しくなくはない、かも?

「それに、弥生と話してると楽しいし。最近、ずっと会えてなかったし」

冬夜くんが、私と話していて、楽しい?

「私、そんな面白いこと言ってる?」

ただの、純粋な疑問だったんだけど、冬夜くんは「ははっ」と無駄にイケメンに笑ってみせた。

あぁ、かっこいいなぁ。

「そんなこと、なくはないけど、何て言うか、他の子よりも気分が楽なんだよね」

その「他の子」に申し訳なさそうにしながらも、私に笑いかけてくれる。

冬夜くん、ほんとに優しいな……。
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