溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
「うんいいよ」


ガチャンッ


「大丈夫?僕持つよ」


部屋から出てきた先輩はそう言って私の持っているおぼんを握る。


「いえ、机すぐそこですし」

「だめだよ、もし落としてガラスが割れたら危ないし」


この距離でそれはさすがにないで——


「姉ちゃん?」

「わぁ!?」


真冬に呼ばれて驚いた拍子にバランスが崩れる。


「きゃっ……!?」


ぎゅうっ、ビシャッ


「……へ……?」


倒れてしまった私は先輩に抱き止められて、2人ともジュースまみれに。


「す、すみませ……」


けれど、先輩はなんだか幸せそうな顔をして私を抱きしめる手を緩めない。


「あ、あのっ……」

「ふふっ、大丈夫?」

「はい……おかげさまで……それより先輩は……!!」

「僕は大丈夫だよ」

「なんだか知んないけどすんませんー」


そう言った真冬は自分の部屋に行ってしまった。


「ベタベタ……ですね……」

「ふふっ、そうだね」


な、なんで嬉しそうにしてるんだろう……。


「けどコップが割れなくてよかった。真白ちゃんが怪我したらどうしようかと思ったよ」

「あっ……ありがとうございます……?」


……先輩は、なんだかんだ優しいのかもしれない。

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