溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
「いいよいいよ。それよりびしょ濡れだね、大丈夫?これで拭いて」


渡されたふかふかのタオル。


「ありがとうございます」


とくになにも気にせず、私はそのタオルで顔や頭など拭かせてもらった。


「ううん。あ、ついでに僕も拭いてくれていいよ?」

「け、結構です……!」

「僕のお膝の上にいてよく言うね」

「っ……」


は、早く退かないと……!

けれど、立ち上がろうと瞬間ぎゅっと手首を掴まれる。


「ね……?お願い……」

「っ……」


うるうるとした瞳で私を見つめる先輩。


「は、い……」


こんなに可愛い顔されたら、逆らえないし……良心が痛む。


「えへへ、ありがとう」

「っ……!」


きゅんっ!

な、なんだこれっ……。

心をぎゅっと掴まれたみたいな感覚がするっ……!


「あっ……え、えっと……」


まだ使っていないタオルの面で先輩の顔をぽんぽんと拭く。


「い、痛くないですか?」

「ふふっ、うん、ありがとう」

「よかったです」

「……ねぇ真白ちゃん」

「?どうかしましたか?」


先輩と視線がぱっちり噛み合う。


「へっ……!?」


頬に手を当てられて、あたふたすることしかできない。


ドキドキって……!心臓が限界だよっ……!!


「僕は、真白ちゃんのこと——」

「あら!!2人とも大丈夫!?」

「っ!お母さん……!?」
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