溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
夏、花火の下、一緒にいるのは
次の日。
私は、なんだかこれ以上先輩といて、好きになってしまうのが怖くて、昨日は先輩とももう関わらないで、お昼も共には過ごさなかった。
そして、なんやかんやで夏休みになってしまったのだ。
もちろん、下校など一緒にできはしなかった。
……私、もう先輩のこと好きになるの、やめたいと思っている。
あんな振られ方をしたら、立ち直れない。
だから……だから、私は先輩とはもう関わらない。
*
そして、迎えた夏祭りの日。
私が、一緒に夏祭りに行くのは……。
「ごめん蒼、待った?」
「いや。別にじゃあ行くかー」
「うん!」
蒼だった。
「蒼、似合ってるね浴衣」
「……お前こそ」
「あはは、ありがとう」
街行く人の視線が、みんな蒼に向いているような気がした。
なんだか……。
晴れていた心が、曇ったみたいだ。
けれど……いつか、晴れてくれると思う。
もう、恋なんかしないかもしれないけれど。
「射的でもやるか?」
「あ、うん!」
「……真白ちゃん?」
「……え?」
蒼と、楽しいがスタートしそうだったのに、目の前に現れたのは、地味な格好をした千星先輩だった。
「ど、どうして……」
「どうしてって……。真白ちゃんが、【もう先輩とは関わりません】とか言うから」