溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
「だ、だからっ……私は先輩とは……!」


その瞬間、ぎゅっと先輩に手首を掴まれた。


「真白ちゃんが、俺と関わりたくなかったとしても、俺は真白ちゃんがいないなんて耐えられない」

「っ……」

「こっちきて」

「おい……!」


人混みの中、掴まれた私はそのまま引かれてどこかへ連れて行かれる。

もちろん抵抗なんてできない。


「せ、先輩……!ほんとにやめてください……!」

「嫌だよ。ねぇ真白、ひどいよ」


っ……。


ずっと前から楽しみにしていた先輩との夏祭り。

けれど、先輩と関わるのは怖い。


なのに、いま、目の前に先輩がいるから、魔法をかけられて……目の前が、おかしいぐらいにキラキラしてる。


「着いた」

「……え?」


人混みからは少し離れた場所。


「ここ、花火が見やすいんだよ」

「っ……わ、私はいいです」

「だめ、離さないから」


掴まれた手首に、獲物を捕らえた肉食動物のような目をしている先輩。

……逃げれない。


それに、おかしいんだ。


先輩が、地味な格好をしていた時、本来の姿でいる時。


前までは、地味な姿は普通だな、本来の姿は綺麗な顔だな、ぐらいだったのに。


好きになってから、

先輩はカッコいいし、可愛くてたまらない。


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