溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
『真白ちゃん』

『……ん……——くん?』

『久しぶりだね』

『久しぶり!どうしたの?』

『僕さ、寂しいんだ』

『どうして?』

『真白ちゃんが、思い出してくれなくて』


ああ、そんなに切ない顔を浮かべないで。


こっちまで、悲しくなる。


口が勝手に動いてるみたいだけれど……これはきっと夢だ。

けれど……ものすごい臨場感。


というよりも、知っている安心感……?


『——くんは、——×——○▲』


あ、あれ……?なんだか、言葉がおかしい。


自分の口から出る言葉が、歪んでいるみたいだ。


そして、ふわっと白い光に包まれて。


ピピピピッ ピピピピッ


「ん……」


あ、れ……?

部屋に鳴り響く目覚まし時計の音。


ピッ。


目覚まし時計を止めて、起き上がる。


「……あの男の子、本当に誰だろう……?」


やっぱり、どこか先輩に似ているような……。


でも、こんな夢を見るなんて初めてだ。


けれど、次の日も。



『真白ちゃん。助けて』


次の日も。


『僕、独りぼっちなんだ』



ずーっと、ずーっと。


初めて男の子の夢を見た日から、男の子の夢しか見なくなっちゃって。
< 88 / 150 >

この作品をシェア

pagetop