溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
「……あ、もうこんな時間。じゃあアタシはこれで」

「あ、ありがとうございました」

「ん、まぁいいわよ」


ふっとカッコいい笑みを浮かべた小華井先輩は、屋上を出て行った。


……人は見かけによらないなぁ。


私も、教室に戻らないと。

あと少しで休み時間が終わっちゃう。


けど……なんだか、サボっちゃいたいな……。


ガチャンッ


ん……?誰かきて———


「せん……ぱい……?」

「っ……!?ま、真白ちゃ……」


明らかにこの人は先輩だ。

だけれど……。


髪の毛はぐちゃぐちゃで寝癖ができているようで、制服もめちゃくちゃ緩く着こなしている。

まるで、先輩ではないみたいに。


いつもの先輩は、王子様だとみんなから言われていて。

私もその通りだとは思う。


けど、いまの先輩は王子様では、ない。


「あっ……ご、ごめん……これはちが……」


逃げようとした先輩の手首を、今度は私がぎゅっと掴んだ。


「……行かないで」

「っ……!」


視線が交わり、目を見開く先輩。


「……ごめん、もうすぐ授業だし」

「一緒に、サボりましょう」

「僕は生徒会長だから」

「じゃあ尚更、疲れてるんだから休みましょう」

「……」
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