溺愛体質の先輩が甘くするのは私だけ。
先輩が、私から離れて行くなんて、どういうことだろう。


「……僕は、王子様じゃないといけないから」

「王子様じゃないと、だめ……?」


なんで……?


「どうしてですか?」

「……完璧な人じゃないと、僕の好きな人から逃げられちゃうでしょ?」

「っ……」


なんだろう。


先輩と再び視線が噛み合って、伝わってくる真剣な表情。

私に対して言っているんだと思ってしまうくせに、やっぱり先輩の片想いしてる人へ向けているような気もする。


けれど……けれど、もし本当に私に向けてなのなら。


「私は、完璧じゃない人の方が好きですよ?」


自分でも驚くぐらいに溢れた笑み。


「なっ……!?っ……真白ちゃんの、バカッ」

「へっ!?」


ガーンッと効果音がつきそうになるぐらいなんだかショックを受けたっ……。


た、たしかに私はバカだけれど……!


「……俺のこと、見ないでね」

「えっ?な、なんでですか?」

「いま、ものすごーく情けない顔してるから」


私に背を向ける先輩。


いつも『僕』なのに、いまは『俺』と言っているところに、なんだか胸が高鳴った気がした。


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