仮面王子とのメモワール
「とりあえず、1限目くらいは寝てろよ」
「うん……ありがと」
コツン、と私の額を小突いて、シュウちゃんは保健室から出て行った。
ドキドキと心臓が静かに音を立てている。
いつも、私はシュウちゃんに心配かけてばかりだ。
思い切って、バフっと体をベッドに沈めた。
寝不足だって言っちゃったし、シュウちゃんの言いつけを守って1限目はここにいよう。
そう決めちゃえば案外気持ちは楽で、1回だけ大きく息を吐いた。
「………」
ドクン、ドクン。
頭は冷静なはずなのに、心臓の音は朝からずっと速い。
1人になるとなおさら、その音がよく聞こえてくる。
さっきのシュウちゃんへのドキドキとはまた別の、嫌な音。
……嫌だと、思いたい音。