仮面王子とのメモワール
驚くくらいの平常モードに、今度は逆にフツフツと怒りがこみ上げてくる。
「……今更、私になんの用?」
言いたいことも、聞きたいことも、本当は山ほどある。
けれどそれらの気持ちを押しのけて最初に出たのは、そんなセリフだった。
自分の想像よりはるかに低く出た声に、彼は一瞬目を丸くする。
……けれど、それからまたフッと笑うのがこの人の掴めないところ。
「その強気な態度は変わってねぇのな」
「そっちこそ、その猫かぶりは変わってないんだね」
そっちがその気なら、私だって言う。
さっきの自己紹介のときに見せたさわやかな笑顔とは無縁の、この意地の悪い笑顔。
相変わらずな猫かぶり。仮面。二重人格。
「俺のこの性格知ってんのは、唄だけだろ?」
……この男、早川律紀は、中学3年の夏まで同じクラスだった。
そして。
「俺ら、恋人だったんだから」
────私の、かつての彼氏でもある。