仮面王子とのメモワール
好きで好きで仕方なかった、律紀の声。
見上げると、その瞳が真っ直ぐ私を映していた。
「……なんで、」
なんで、そんな顔するの。
私を見つめる律紀の瞳がわずかに揺れている。
本当は、ずっと思ってた。
……何か、あったんじゃないかって。
「りつ……」
「俺の本性、バラすんじゃねーよ」
「っ!」
何かをのみ込んだようなその言葉に、私はそれ以上何も言えなかった。
スッと離された手が、妙に熱い。
たとえ何か理由があったとしても、2年前、何も言わずに置いて行かれたことには変わりない。
うん、だから、律紀のことなんてもう知らない。
もう……、好きじゃない。
「じゃ、またよろしくな。"蓮見さん"」
わざとらしく私の苗字をを呼んだ彼は、再び口角を上げた。
ドクンドクンと鳴りやまない心臓の音が、なんだか悔しくて仕方ない。
────勝手にいなくなった元彼は、今日、当たり前のように私の前に戻ってきた。