仮面王子とのメモワール
「ひゃ〜、相変わらず完璧だね、早川くん」
「……ほんっと、八方美人は変わらないんだから」
「まぁ、それ知ってるのは唄だけだしね」
私と未央だけは、その輪の中に入らず蚊帳の外。
苦笑する未央は、律紀の本性を知っていた。
といっても、本人の素を直接見たことがあるわけではない。
全部私が伝えていたこと。
彼は、基本的にその仮面を外すことはなかったから。
それは、どうやら今でも同じらしい。
未央はいまだに、私を置いて勝手にいなくなった律紀に怒ってくれていた。
表面上はニコニコ彼と会話をしてはいるけれど、本人曰く、内心は『腹わた煮え繰り返ってどうにかなりそう』なのだそうだ。
未央とは、幼稚園からずっと一緒の幼なじみであり、親友であり、家族のような存在だったから。
だからこそ、私が恋にキラキラしていた時期も、ボロボロになっていた時期も、未央は知っている。