仮面王子とのメモワール


「ひゃ〜、相変わらず完璧だね、早川くん」

「……ほんっと、八方美人は変わらないんだから」

「まぁ、それ知ってるのは唄だけだしね」


私と未央だけは、その輪の中に入らず蚊帳の外。



苦笑する未央は、律紀の本性を知っていた。


といっても、本人の素を直接見たことがあるわけではない。

全部私が伝えていたこと。



彼は、基本的にその仮面を外すことはなかったから。


それは、どうやら今でも同じらしい。



未央はいまだに、私を置いて勝手にいなくなった律紀に怒ってくれていた。


表面上はニコニコ彼と会話をしてはいるけれど、本人曰く、内心は『腹わた煮え繰り返ってどうにかなりそう』なのだそうだ。



未央とは、幼稚園からずっと一緒の幼なじみであり、親友であり、家族のような存在だったから。


だからこそ、私が恋にキラキラしていた時期も、ボロボロになっていた時期も、未央は知っている。

< 17 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop