仮面王子とのメモワール
私は私で、いまだにこの現実を受け入れられないでいた。
いまこの瞬間、彼が同じ空間にいること自体が信じられない。
髪色と少し顔が大人っぽくなったということ以外は、全部あの頃のまま。
ニコニコした表情も、教室内でクラスメイトに囲まれている光景も、全部……ぜんぶ。
「うへ〜。すごいな、早川のやつ。中学のときもあんな感じだったわけ?」
「お、来たな。唄の追っかけ」
「おーい聞こえてるぞー」
どこかへ行っていたらしいシュウちゃんが、フラッと私たちのところまでやって来た。
未央がケラケラと笑いながらシュウちゃんに絡むのはいつものこと。
「だいたいあんな感じよ。人当たりもいいからね、彼」
シュウちゃんに口ではそう説明する未央だけれど、表情は呆れ顔だった。
彼女はたぶん、私以上に私のことで怒ってくれている。