仮面王子とのメモワール


キッと見上げると、目が合った。


その表情からは、何を考えているのか読み取れない。


「唄」

「っ……」

律紀が、私を呼んだ。


ドクンと心臓がまた音を立てる。


忘れたいのに、体が嫌でも反応してしまう。


「それは、アイツにバレたくないから?」

「え?」

「お前の新しい男」


律紀が誰のことを言ってるのかは、すぐに理解できた。



「シュウちゃんはそんなんじゃ……」

「ふぅん?"シュウちゃん"、ね」


なんだか嫌味ったらしい言い方をする律紀にムッとする。


別に、律紀には関係ないし。


そう自分に言い聞かせている時点で、私はダメダメなのかもしれない。


< 26 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop