仮面王子とのメモワール
スッと律紀の手が伸びてきて、私のショートボブの髪に触れた。
懐かしいシトラスの香りが鼻を掠める。
「髪、いつから短いんだよ」
「……は?」
「化粧も覚えると女は化けるな」
ポツリ、ポツリと溢れる様にそう言う律紀。
「……なに、嫌味?」
「まぁ、そんなとこ」
ぶっきらぼうに言い放つ彼の考えていることはよくわからない。
元々掴めないところはあったけど、いまはもう余計にわからなさすぎる。
「その"シュウちゃん"はお前のこと好きなんだ?」
「なっ……!」
「見てりゃわかる。唄だって満更でもなさそうなくせに」
いつの間にか距離をとって、律紀はフッと笑う。