仮面王子とのメモワール
「……その真っ直ぐで歪まないとこ、ホント変わんねぇのな」
「だって、話せる距離に律紀がいるから」
「あー……、嫌味?」
ハハッと、自嘲するような笑みを浮かべる律紀。
裏の顔の彼の本音を、やっと見た気がした。
「律紀」
「やめろ。そんな風に呼ぶな」
「りつき」
「いい加減にしねぇと、その口塞ぐぞ」
あ、と思った。
キッと鋭い瞳が私を捉える。
右手首がグイッと引っ張られて、視界が傾いた。
目の前いっぱいに律紀の顔が迫る。
なんだか懐かしいとさえ思ってしまった。
キス───……は、されなかった。
「……拒めよ、バカが」
ふっと空気が揺れて、あっという間に距離が開(ひら)ける。
「律紀はそんなことしないでしょ」
「ほんっとお前、変わってなさすぎてムカつく」
あーと半ばヤケクソのように頭をガシガシと掻いて、ドカッと誰かの机の上に腰をかけた。