仮面王子とのメモワール
「……だったら……でいいだろ。あ?キョーミねぇよ」
詳しい内容までは聞こえてこないけれど、その口調から察するに何やら少しイラついている様子。
えーっと、どうしようかな。
開けるに開けられなくなってしまって、不自然にドアの前で固まってしまう。
教室の中の彼がいなくなるまで待つか。
いやでも、未央を待たせてるわけで。
そっと入って、ササっと定期だけ取ってこよう。
幸い、私の席は一番廊下側だからすぐに取れる。
頭の中でシミュレーションをして、よしと意気込んでドアを開けた。
……のが、間違いだった。
「……え、」
開けた瞬間、思いがけず目が合ってしまったその人物。
ただ定期を取ることしか考えてなかった手前、まさかのその人物に目を丸くしてしまった。
そして、彼自身も急に入ってきた私に驚いた様子。