仮面王子とのメモワール
「……早川、くん」
思わず名前が口に出た。
早川律紀くん。
入学式の頃から男女問わずに人気な、ちょっとした有名人だ。
「あれ、蓮見さん。どうしたの?忘れ物?」
いつの間にか電話を切ったらしい彼が、にこやかに笑いながら私にそう聞いてきた。
あぁ、そうだ。今日から同じクラスだった。
去年は違うクラスだったけれど、そんな私ですら知っている。
誰にでも分け隔てなく優しくて、まるで"王子様"みたいだと女子から騒がれている人。
……って、いやいやいや。そうじゃなくて。
「……こわ」
「え?」
あ、やば。
思わず漏れた言葉にハッとする。
咄嗟に右手で自分の口を覆ったけど、もう遅い。