仮面王子とのメモワール


「もしかして蓮見さん、いまの聞いてた?」

「いや……えーっと、あはは……」


にこやかな笑顔が、途中から全く目が笑ってないように見えてくる。


こんな下手な演技で到底誤魔化し切れるわけもなく、観念してコクリと頷いた。



「……チッ」

そして直後に聞こえたまさかの舌打ち。


びっくりして顔を上げると、あぁーっとやけくそのように頭を掻く"王子様"がいた。



私でも知っている。


彼は、優しくて、いつもにこやかな人。


それが……。




「……あのバカ。だからこの時間に電話してくんなって言ったのに」



───これじゃ、まるで別人じゃないか。

開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。



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